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エレナの遠乗りが日課の如く三日続けられたのを聞いたハンベエは、『キチン亭』の主人に、「ちょっと消える。訪ね人が有ったら、三日の内には戻って来ると待たせて置いてくれ。」と言って、何処かに出掛けてしまった。水筒と携帯口糧を持って行ったようだ。片や、お姫様いや王女のエレナは甲冑こそ着ぬものの王宮でのドレス姿は衣更え、水萌黄色の乗馬服にいつもの白絹のマントを靡かせ、腰に剣を一振り、供は侍女頭のソルティアだけと至って無用心に四日目の遠乗りに出掛けていた。ハンベエから、ルキドと言う薄気味悪い男が狙っているかも知れないと聞かされているのに大人しくしている気は更々ないようだ。剣の腕に自信が有るのだろうが、この王女、合戦の間も兵士達に常に回りを固められて、人を斬ったのを見た事が無い。剣の修業には血道を上げた時期が有り、ハンベエも王女を強いと見立てが、実戦でどの程度役立つのだろう。ルキドと言う男の話を聞いた上での、ivf價錢 この無用心な振る舞いはむしろ相手を誘い、襲って来るのを待っているかのようであった。案の上と言うべきか、お約束通りと言うべきか、はたまたこれが物語りと言うものの抗えない必然と言うべきか、王女が走らせる馬が雑木林の生い茂った木々の間を抜けようとした時に、突然ピーンと横一文字に綱が張られた。あわや、王女の馬は綱にぶつかるかに見えたが、如何なる手綱捌きを施したのか、ぱっと跳躍してヒラリと躍り越えてしまった。間垣平九郎もびっくりである。 代わりと言っては何だが、後ろを走っていたソルティアの馬がしっかりと引っ掛かって落馬した。馬の上は結構高い場所だ。落馬等となれば下手をすると大怪我をしかねないのだが、ソルティアも心得があったのだろうか、上手く地面を転がって骨を折るのは免れた様子だ。「ソルティア、大事有りませんか。」エレナは馬から降りると、駆け寄って声を掛けた。はい、何とか。」ソルティアはどうにか半身を起こして気丈な返事を返した。それを見たエレナは、小さく肯くと腰の剣を抜き、「出て来なさい。私に用が有るのでしょう。」と凛とした声で言い放った。張られた綱の片側の木陰から二人、そしてエレナを挟んでそれとは反対側の木陰から二人、取り囲むよう四人の兵士崩れの男共が現れた。その内の一人は顔の半分が醜い生み痣で覆われている。今更紹介するまでも無い。ルキドとその仲間である。「あっさり、飛び越えるとは誤算だったぜ。馬の扱いは上手いようだな。」ルキドは薄笑いを浮かべて腕組みをしている。「やはり、あなたでしたか。如何なる理由で、この私を狙うのですか?」恐れる様子も無くエレナが尋ねる。「この俺を知っているのか? そう言えば、目が合ったな。しかし、覚えられていたとはな。」「一度見たら忘れられない顔ですもの。何故、私を襲うのですか。」「けっ、言ってくれるぜ。悪かったな、醜い顔で。」「醜い等とは言ってませんよ。それより、私を襲う理由を聞かせて下さい。」「理由、そんなものどうだっていいだろう。」ルキドが顔を歪めて吐き捨てた。と同時に、背後にいた二人が襲い掛かって来た。一瞬の出来事であった。 カインッ、キンッ、金属のぶつかり合う音が二つ連続して起こった後に見た光景は、襲撃者達が目を疑うものであった。