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fumio65

まあ今更しょうがねえ

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まあ今更しょうがねえ

まあ今更しょうがねえ、と少しだけ渋面を作ってボーンはとある旅籠に紛れ込んだ。旅籠の主人が入口近くに腰掛けて帳簿をくっていたが、ボーンは気配を消して奥に忍び込んだ。間の抜けた話だが、主人は全くボーンの侵入に気付かなかった。恐るべし、陰形の術。旅籠の中に入り込んだボーンは陰形の術で気配を消したまま、空き部屋を探した。そして、手頃な部屋を見定めると、音もさせずにドアを開いた。少々驚いた事にドアには鍵も掛かっていなかった。(おいおい、無用心だろう、鍵も掛けないで。尤も鍵を掛けてても、俺には無意味だがな。)などと考えながら部屋に入ったボーンは、一歩踏み込むなりぎょっと目を見開いて立ち尽くした。中に人がいたのである。全く人の気配など無かった。腕利きボーンには考えられない失態であった。. 驚きはしたが、ボーンは一切物音を立てず相手を見詰めた。老人が一人ベッドに腰掛けてボーンの方を見ていた。歳の頃は七十を過ぎているように見えた。白髪を後で一纏めに紐で結び、口髭顎髭も白くフサフサと艶めいている。肩口に剣の柄を当てるようにして抱き、空気かと思えるほど静かな佇まいでボーンを見詰めている。しかも驚いた事に、突然部屋に闖入して来たボーンを全く驚くでも無く穏やかな目で見ているのである。良く見れば、目の輝き、身体の雰囲気は老いた様子は無く、むしろ壮者のそれを思わせた。「何用かの?」老人は小さな静かな声でニコニコと微笑みながら、ボーンに話し掛けた。一方、ボーンは動けないでいた。老人がいた事にも驚いたし、老人が驚きもしない事にも半ば呆れていたが、ボーンが動けないのは老人の佇まいに一分の隙も無いからである。international school admission open騒がれてはマズイと飛び掛かって口を塞ごうと一瞬思ったボーンであったが、全く隙を感じさせない老人の佇まいに身動きどころか、息すら出来ないほどであった。(余程の達人・・・これ程強そうな奴は俺の人生で二人くらいしか知らない。) ボーンは老人を見て、そう感じていた。ボーンの頭に浮かんだ二人とは、一人はハンベエの事であり、もう一人はサイレント・キッチンの首領『声』の事であった。ハンベエと戦ったエルエスーデやテッフネールも恐ろしい男達であったが、残念な事にボーンはその二人を見た事が無かった。(下手をするとその二人よりもこの爺さん、強いかも知れん。)冗談でなく、ボーンはそう感じた。. 「爺さん、突然踏み込んで来た俺に驚かないのか。」

「こんな歳じゃ。驚くほどの事は既に世渡りの上で大概見て来たよ。」

「・・・。」

「そんな所で固まっておらず、戸を閉めて、椅子にでも腰掛けては如何かな。」 老人は言った。ボーンは黙ってそれに従った。老人の隙の無さ、威圧感には大いに押されていたボーンではあったが、老人にはカケラの殺気も無かった。ボーンが素直に従った所以(ゆえん)である。「表が妙に騒々しいが、追われておいでかな?」酷く優しそうな声音で、老人が尋ねる。ボーンは黙って頷いた。暫くすると、ステルポイジャン軍防諜部隊は宿改めを始めた。老人の部屋にもそれはやって来たが、穏やかに怪しい者は見ていないと説明する老人を疑う防諜部隊員も無く、「何かと物騒な世の中だ。老人もくれぐれも気をつけてな。」と心配までしてくれて去って行った。 無論、部屋の中にボーンの姿は見えない。

宿改めが去って若干の時を経て、ボーンがベッドの裏側から姿を現し、「爺さん、あんた何者だ?」と言った。

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