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fumio65

「ああ、そのつもりだ

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「ああ、そのつもりだ

「ああ、そのつもりだ。しかし、貴公が賛成してくれるとは意外だなあ。」ハンベエは少し驚いたようにモルフィネスの方を向いた。「思案の末だ。他の者がテッフネールに手を出したら、どれだけの被害が出るか分からない。ハンベエと戦って私も学んだ。」モルフィネスは冷然と言った。「でも、ハンベエさんに万一の事でも有ったら。」「その時はその時で、手を考えましょう。やられるにしても、ただやられるハンベエでも無いでしょう。」「ハンベエさん・・・。」エレナは心配げにハンベエを見詰めた。「大丈夫だ。・・・と、取り敢えず言っておく。」ハンベエはエレナを安心させようとか、少し笑みを浮かべて言った。「取り敢えずなのかよお。ハンベエ、死んだりしたら、オイラ承知しないからねえ!」「分かってるよ、ロキ。」やれやれ、そもそも俺はヒョウホウ者なんだぜ、皆して無理な注文しやがると、心中思いながらも、ハンベエは頼もplaygroup課程しげな顔をして答えた。死のうはイチジョウ、覚悟の前、命知らずなハンベエが、皆に死ぬなと案じられ、俺はそんな愛されるような奴じゃあないんだがと、笑いたいやら泣きたいやらで、困惑しきりな胸の内であった。次の日の早朝、タゴロロームの場末の旅籠『ドヤサ屋』から、腰に刀を差した初老の人物が、音も無くといった静かな風情で出て来た。言わずと知れたテッフネールである。昨晩は、そこに宿泊したようである。この宿の主はテッフネールと同年輩のバンナという名の女主人、前回登場した時、如何にも一癖も二癖も有りげだったバンナとテッフネールがどんなやり取りをしたかは不明であるが、テッフネールが何者で、タゴロロームに何をしにやって来たかを知る者はハンベエ以下数名であった。例えバンナという人物がどんな地獄耳であったとしても、全く知る由の無い事であり、ただの旅人として泊めただけに違いない。一介の旅行者(又は漂泊人)に過ぎないテッフネールに注意を払ったのは、なまじ剣の道に通じた少し物好きなエレナ王女のみだけだったのである。だが、この日のタゴロロームは少し様子が違った。ハンベエが守備軍全兵士にテッフネールに関する情報を周知し、この人物に手を出さないよう厳命したからである。忽(たちま)ち、兵士達の間には緊張が走った。ゲッソリナから刺客現れる!ゴロデリア王国随一の武人テッフネール!『冥府の水先案内人』、ハンベエの首を狙う!緊張の一方、『手を出すな』という命令に兵士達は拍子抜けするやら、やれやれと胸を撫で下ろすやらだった。敵の刺客を前に、『手を出すな。』とは、奇妙な命令である。普通は、『見つけ次第』始末又は捕縛せよ、となるはずである。だが、ハンベエ本人の命令という事で、『ああ、ハンベエなら自分で片付けに行くだろう』と、奇妙にも兵士達が納得してしまったのである。ハンベエ抹殺のため、テッフネールという刺客が送り込まれて来た・・・という情報に触れた兵士の大半は、意外な事にハンベエの身を少しも案じなかった。自分達の大将が狙われているにも拘わらず、やり合ったらどっちが勝つかと賭けが始まったくらいである。無論、ハンベエがテッフネールに討ち破れて死んだらザマアミロだ、とまで考えるような兵士は流石にいないようであるが、全体的に危機感というものを持たなかった。むしろ、ハンベエとテッフネールの戦いを物見高い野次馬のように待ち受ける空気が強かった。下馬評では、賭け率二対一でハンベエ優位であった。古い兵士はテッフネールの武勇を知ってはいたが、何しろ十年も昔に隠退した人物である。一方、ハンベエの大暴れはついこの間、しかもその乱暴狼藉っぷりを目の当たりにしているタゴロロームの兵士達として見れば、俺らの大将という身贔屓を差っ引いて見ても、ハンベエ優位の予想に傾くのに何の不思議もなかった。
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